こんにちは、10年以内にFI(経済的独立)を目指している経済ライターのヒラノです。
転職を果たして、職場環境が大きく改善したことで、FIRE(経済的自立と早期リタイア)のRE(早期リタイア)部分が個人的には不要になりました。
FIとはまさに「会社に縛られないお金」で、会社や上司に不満があったら、いつでも辞表をたたきつけられる、という誇り高い働き方です。
個人的な感覚ですがだいたい、金融資産が900万円を越えたあたりから自信がついてきた感じがします。「会社に縛られないお金」を持つことが会社からの精神的自立にもつながることを示す体験でした。
終身雇用・年功序列が崩れる中で、以前ほど会社への依存感は減りました。こうした労働市場のトレンドも会社員の経済的自立、精神的自立を後押ししています。
一方、企業の側もこうした状況を理解しています。終身雇用、年功序列、家族経営が終わっても、従業員にモチベーション高く働いてもらい、生産性を高めようと、あの手この手の工夫をしています。
働くことはあなたに達成感や幸福感を与えるため、非常に重要です。
しかし、モチベーション高く働き過ぎれば、東京大学教授で社会学者の本田由紀さんが提唱した「やりがい搾取」の罠にはまってしまいかねません。
この記事では、FI実践者が「やりがい搾取」に引っかからないための会社との適度な付き合い方を模索していきます。
こんな人におすすめの記事です。
- 働くことにやりがいを感じている
- 仕事が長時間労働だ
- 仕事がクリエイティブ系、人の為になる系
- 会社の社風が好きだ
- 会社の同僚が好きだ
楽しい職場の「やりがい搾取」問題
まずは「やりがい搾取」がどういったモノなのか見ていきましょう。
- やりたいことがやれる、趣味性
- ゲーム性、売り上げ・収入の増加などの「達成度」が変動する裁量性の高さ
- 奉仕性、顧客に対して最大限に奉仕する姿勢・状況、
- サークル性・カルト性、高揚した雰囲気・状況
この4つの要素が絡まり合うことで、人々を「自己実現系ワーカホリック」=「やりたいこと」に没入し過剰に働いてしまう状態―に誘う仕組み
(『都市問題』2020年12月号 ケイン樹里安 大阪市立大学都市文化研究センター研究員のまとめから引用 一部改変)
ですが・・・「過剰に働いてしまう状態」が生まれてしまうのがやはり問題です。やりがい搾取の問題点をまとめてみました。
- 働き過ぎにより、心身を壊すリスクがある
- 家族やパートナーとの関係をないがしろにしてしまう
- 自分の自由な時間や余暇が持てない
- サラリーマンという働き方の特性上、こうやって働き大きな成果を残しても給与へはわずかしか反映されない
2020年4月〜2021年3月、仕事上のストレスなどが原因でうつ病になり、労災と認められた人は608人と過去最多でした。また、過労自殺に追い込まれた人は未遂も含め81人でした。
新型コロナへの不安やパワハラなど労働時間以外の要因もありますが、働き過ぎは明らかにうつ病や自殺などの原因になっています。なぜ、こんな状況が起こってしまうのでしょうか。
達成感という「麻薬」
プロジェクトを成功する、営業目標を達成する、上司に褒められる、社内で評価される、給与が上がる、昇進する。
仕事で成功することで、いろいろな達成感が生まれます。こうした時に脳内で出ているのが「幸福物質」のドーパミンです。実はこの脳内物質「やりがい搾取」と深く関係しています。
精神科医でベストセラー作家の樺沢紫苑さんの解説を見ていきましょう
ドーパミンは、簡単に言うと「自己成長物質」です。何かを頑張って成果を得たときに、「やったー!」という達成感が得られます。この達成感はドーパミンによるものです。「また、次も頑張ろう!」という気持ちになって、さらに難しい仕事や課題にチャレンジし、また結果を出していく。これを繰り返すことによって、人間は成長していきます。
(『精神科医が見つけた3つの幸福』 樺沢紫苑著)
こうしたプラス面もあるドーパミンですが、飲酒やパチンコ、ゲーム、買い物などをした時にもドバドバと脳内で出てきます。このため、「依存症の原因物質」ともみられているそうです。
ドーパミンは「幸福物質」という光の側面と、「依存症の原因物質」という闇の側面の「2つの顔」を持っています。(中略)ドーパミンのダークサイドに呑み込まれると「仕事に行けない」「学校に行けない」状態となり、人生を失うことになります。 非常に取り扱いの難しいドーパミン。「ドーパミンとうまく付き合う」ことが、人生で成功するか失敗するかの分かれ目であり、幸せになれるかどうかの分かれ目でもあります。(同上)
「幸福の順番」を間違えない
では、どうすべきなのか。精神科医の樺沢さんは以下の様な指摘をしています。
セロトニン的幸福→オキシトシン的幸福→ドーパミン的幸福の順番。 これが正解です。ドーパミン的幸福は一番最後です。
(『精神科医が見つけた3つの幸福』 樺沢紫苑著)
図で示すとこんな感じです。下から積み上げていくことが重要なんですね。
一方、過労死、やりがい搾取にはまってダメになった人の状況はどんな感じなのでしょうか。
もし、あなたの健康面での幸福(セロトニン的幸福)が壊れたらこんなことに成ってしまいます。成ってしまいます。
- 生活習慣病
- メンタル疾患(うつ病などなど)
一方、あなたの家族などつながりの幸福(オキシトシン的幸福)崩壊したらこんなことが起きます。
- 離婚
- 親子断絶
- 家庭崩壊
- 孤独、孤立
どちらも恐ろしいですね。そして、家庭内が仲が悪いとストレスが増大するため、こうした幸福の「崩壊」は「うつ病×離婚」など重なってやってくることも多いのです。
大きな不幸があっても人はその不幸を乗り越えることはできます。とは言え、なるべくこうした不幸は避けたいですよね。で
仲間でも「きちんと断る」
なぜ、人はいろんなものを犠牲にしてまで「仕事」にのめり込んでしまうのでしょうか。
それは、職場の仲間に評価されたい、そして、仲間からのけ者にされたくないという意識が働きます。
とても日本人的意識です。
『まなざしに管理される職場』(大野正和著、青弓社)では、実際に日本的経営(ジャパナイゼーション)を取り入れたアメリカの製造業企業で、社員が自主的に残業に取り組んだり、困っている仲間をサポートしたり、そうした一方で、職場のルールを破った社員をつるし上げたる様子が描かれています。
要するに
- 後輩がミスをしたから、サポートで残業する
- 経営危機だけど、みんなが頑張っているから、転職せずに支える
- 会社の目標にあと少しだから、残業してでも達成を目指す
- お客様のためユーザーのためになるなら、がんばって残業する
- 転職したあいつは裏切り者だ
こうした職場の帰属意識、仲間意識こそが「やりがい搾取」の罠ということです。仲間のためと思っても、結果、人手不足なのに仕事が回っていれば、人手不足は恒常化し、職場の仲間が苦労します。
要するに、得をするのは会社と株主だけです。
「サービス残業」をしてしまえば、あなたは社畜以外の何者でもないと思います。
FI(経済的独立)を果たしたのに、やりがい搾取にはまって不幸になっては意味がありません。
とは言え、極端に人間関係を無視すれば、楽しい職場は壊れてしまい、あなたは村八分ならぬ「職場八分」で仲間はずれにされるかも知れません。
どうやってこうした状況を防げば良いのでしょうか。
私の考える解決策は以下です。
まずは働く職場をきちんと見分け、選ぶことからです。
- 「みなし残業代」のある職場はなるべく避ける
- 転職口コミサイトで残業時間を調べる
- 3年後、離職率を調べる
- 就職四季報などで月の残業時間を調べる(回答無しは要注意)
- 月45時間以下の企業に就職する
- 小さすぎるベンチャー企業は避ける
逆に、今こんな職場で働いていたとしたら、とっとと転職した方が良いです。
転職するかどうかは、給料との関係もあるので、きちんと考えて不利にならない転職方法を考えましょう。給料が下がれば、FI(経済的独立)やFIREしにくくなります。
また、個人でできることとして、
- サービス残業は絶対にしない
- 通常は残業をしない
- 友人は基本的に職場以外で見つける
- 仲間を助けるための残業は「月に1回午後9時まで」などリミットを決める
- 週、月のスケジュールを検討して、残業が発生しそうなら仕事は断る
- 就業時間後に予定を入れる(自分自身の集中力をアップさせ、残業を阻止するため)
以上のような対策があります。
こうした対策に加えて、30代、40代になってくると昇進し「マネージメント業務」を任せられることが増えてくると思います。
会社内の昇進のルートとして、「マネジメント」のルートとは別に「プロフェッショナル」としてのルートが用意されている場合があります。
マネジメント業務を始めると、残業が多発しやすいので、マネジメントスキルがない人は、割り切ってそちらを選択するのも手の一つだと思います。
まとめ
いかがだったでしょうか。
FI(経済的自立)を達成して、仕事もしながら。一方で、自分の人生、家庭を優先し、「やりがい搾取」や「働き過ぎ」にならないための方法を検討してみました。
FIREが話題になり、FIREムーブメントが広がるで、「FI」×「働き続ける」という選択をする人も増えてくると思います。
FIしたからこそできる会社や仕事との良い距離感について、良い解決策を皆さんとみつけていきたいです。